唾液のお話③

神戸市東灘区岡本にある歯医者さん、阪急岡本駅から徒歩2分の岡本歯科ロコクリニックです。
前回に引き続き唾液のお話です。
今回は唾液が減ると起りうる5つの影響についてです。
①むし歯になりやすくなる
唾液は、むし歯菌が作り出す乳酸を中和してくれる作用があります。
むし歯はこの乳酸が歯を溶かすことで起こることがわかっています。唾液の量が減少すれば、乳酸を中和する作用が低下して、乳酸が歯の表面を溶かすのを防ぐ力が低下してしまいます。
また、唾液の中に含まれる成分に、カルシウムやリン酸などの無機質があります。むし歯菌が乳酸で歯の表面を溶かし始めたごく初期の段階であれば、これらの成分のおかげで歯の表面を修復することが出来ます。
唾液の量が減ると、この歯の表面の修復力が低下します。
唾液には洗浄作用もあります。歯についた食べカスを洗い流してくれる働きです。
唾液の量が減りますと、洗い流す力が低下しますので、歯の表面などに食べカスが残留しやすくなります。
むし歯菌は、これら食べカスを栄養源として増殖していきますので、唾液の量が減ると、むし歯菌が増えやすい環境を作ってしまうことになります。
また、むし歯菌が食べカスを分解した後の代謝産物として、乳酸が産生されますから、乳酸の増加にもつながります。
このように、唾液の量が減ることは、むし歯になりやすい条件を作ってしまいます。
②歯周病になりやすくなる
唾液の量の減少は、むし歯のリスクだけでなく、歯周病を進行させるリスクも伴います。
歯周病は、フォルフィロモナス(ポルフィロモナス)・ジンジバリスなどの歯周病菌が原因であることがわかっています。
唾液のもっている抗菌作用には、歯周病菌が増えすぎない様にコントロールする働きがあります。唾液の量が減ると、歯周病菌が増えるのを抑えることが難しくなり、歯周病を進行させてしまうことになります。
③入れ歯が痛くなりやすくなる
歯茎は弱い部分です。入れ歯は、その弱い歯茎に乗っています。唾液の量が十分にありますと、唾液が潤滑剤の役割を果たしてくれますので、入れ歯がこすれて痛くなることはないのですが、唾液の量が減りますと、歯茎に直接入れ歯が接触するようになります。このために、入れ歯が擦れて、歯茎に傷を付けやすくなります。
また、総入れ歯の方は、唾液が入れ歯と歯茎をぴったりくっつける役割を果たします。硝子の間に水分があると、硝子同士が吸着して離れにくいのと同じ作用です。
④口内炎が出来やすくなる
お口の中は、歯という硬い組織(=硬組織)と舌・頬・歯茎・唇といった軟らかい組織(=軟組織)から構成されています。
動きを伴う場所で、硬組織と軟組織が擦れ合うところは、からだの中には他にはありません。軟組織は軟らかくて傷つきやすいところですから、そこに歯があたりますと、容易に傷つき口内炎をつくってしまいます。
そこで、唾液が潤滑剤の役目を担い、軟組織と硬組織が直接触れあわないようにし、軟組織を保護しています。
唾液の量が減りますと、軟組織を守る作用が低下しますので、傷つきやすくなることで、口内炎を起こす可能性が高くなります。
⑤カビがはえる
カビがはえると言うと驚かれるかもしれません。
口の中にできるカビは、カンジダという真菌が原因で出来ます。カンジダは常在菌といって、もともとお口の中にいる菌で、通常は免疫力のおかげで数が増えすぎない様に抑えられています。
体調が悪くなったりすると、免疫力が低下してお口の中に症状が現れてきます。
しかし、唾液の量が減ることでも、その抗菌成分が減少することと、粘膜を傷つけやすくなることで弱くなり抵抗力が低下しますので、カビが生えやすくなります。
続く。

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